今年、私が愛してやまない DS9 のキャラクターを演じていた俳優が二人、この世を去りました。
一人は前回の記事に書いた エイロン・アイゼンバーグ (Aron Eisenberg) 、もうひとりは、レネ・オーバージョノー (René Auberjonois)・・・
歴代のスタートレックシリーズ、とりわけ「新スタートレック」(TNG)、「スタートレック:ディープ・スペース・ナイン」(DS9)、「スタートレック:ヴォイジャー」(VOY) の三作品には、それぞれある意味愛すべきキャラクター達がいます。
TNG であればデータ、DS9 であれば、オドー、VOY ではドクターなど、どこか心のなかにぐっと入り込んでくるキャラクターというものがあります1。
彼らに共通しているのは、三人ともそれぞれ人間ではないということですね。
正確に言えば、ヒューマノイド (人型生命体) ではないということになるのでしょうか・・。データはアンドロイドですし、ドクターはホログラムです。そして、オドーは流動体生物。
それともう一つ共通しているのは、人でないが故の悲哀というものをそれぞれ感じさせてしまうところでしょうか。
その中でも、私は DS9 のオドーがとても好きなキャラクターです。
Rene Auberjonois: レネ・オーバージョノー
(1940年6月1日 ~ 2019年12月8日)
そのオドー役を演じたのが、レネ・オーバージョノー です。
そのレネ・オーバージョノーが、今月の8日に亡くなられました。享年79歳でした。
私は彼の活躍は DS9 で知り、その後、ボストン・リーガルにもレギュラー出演されていたことくらいしか知らなかったのですが、実は古くから俳優として活躍されているんですね。
René Auberjonois, a ‘Deep Space Nine’ Star, Dies at 79 https://t.co/cZjKVj8uE4
— 雑廉堂 (@rough_and_cheap) December 30, 2019
そして、つい最近も映画に出演されていました。
Odo: オドー
スタートレック:ディープ・スペース・ナインでレネの演じたオドーは、ちょっと特殊なキャラクターでした。
自身は 流動体生物 (The Changeling: 可変種) であり、どこで生まれて何の目的でここ (アルファ宇宙域) へ送られてきたのか、それを知るすべをオドーは何も持っていませんでした。ただ、彼の秩序を持って法を遵守する精神、私事を挟まない正義感を買われ、カーデシア占領時代から、テロック・ノール (後のディープ・スペース・ナイン) の保安主任となっていました。
だから、オドーには、本人が意図しようがしまいが、彼のその表情、その背中、その佇まいに自ずと悲しさというか哀愁を感じてしまうんですよね2。なんせ、自分が流動体生物だからということで、好きな女性に好きということができないんですからね。
DS9 もシーズンが進むと、ドミニオンというガンマ宇宙域を支配する勢力が現れ、その「創設者」という存在が流動体生物であることが判明したことで、彼の出自は明らかになっていきますが、それがさらに彼の哀愁を誘うことになります。というのも、ドミニオンはその後、アルファ宇宙域 —— われわれ人類がいる宇宙域 —— の脅威となり、敵対することになるからです。
オドーが活躍する DS9 のエピソード
オドーに関しては、前回のノーグとは違って、レギュラーメンバーなので細かなエピソードを紹介するときりがないので、個人的に「グッ」と来たエピソードを紹介したいな、と思います。
第3シーズン「可変種の定め」では、それまで心の奥底に隠していたキラへの想いを告白します。ですが、そののキラは本物のキラではなかったのですが・・
同じく、第3シーズン、「姿なき連合艦隊・前後編」では、オドーは、DS9 の、これまた奥深いキャラクターであるサブレギュラー、エリム・ガラックとともに、ガラックの暗殺未遂事件と、その奥に秘められた恐るべき陰謀を調査しに行きます。この2話連続の後編では、ガラックがオドーに尋問するシーンがあるのですが、オドーが誰にも打ち明けることのできない自分の本心を吐露します。
この第3シーズンのフィナーレ、「忍び寄る可変種の脅威」では、オドーは戦艦デファイアントに侵入していた可変種を —— 結果的に —— 死なせることになってしまいます。
その死に際に、可変種は次のような伝言をオドーに伝えます。
「我々はどこにでもいる。もう手遅れだ。」
と。
そして、次の第4シーズンのファイナル「可変種の脅威 第二幕 (前編)」で、この同族を殺したという罪で、創設者はオドーの変身能力を奪い、彼を固形種 = ヒューマノイドに変えてしまいます。
第5シーズンの 「秘められた過去」 では、オドーがかつてカーデシア占領時代、テロック・ノールの保安主任だった時代に犯してしまった過ちを、シスコやガラックらとともに「ビジョン」という形で追体験させられることになります。この話はかなり切ない。
第5シーズン、「あの頂きを目指せ」では、Lクラスの惑星に不時着したオドーと、犬猿の仲であったクワークが、共に惑星を脱出する話が描かれます。この話を見ずして最終話を語ることなかれ というエピソード。
その後、「幼き命」では、宇宙をさまよっていた可変種の子 (が入ったカプセル) をクワークから入手し、その子をオドーが育てる、というエピソードです。
その結果、オドーには再び変身する能力が戻りますが、その代償はとても悲しいものでした。
さらに同エピソードでは、オドーを発見者でありオドーの名付親でもある、モーラ博士との和解も描かれます。
第5シーズン、「末裔の星」 では、U.S.S.デファイアントの事故によって作られた「可能性の未来」の話が描かれます。その時、デファイアントのクルーが出会ったのは、事故で200年前にタイムワープしたデファイアントのクルーの末裔でした。この事故によって、キラは死ぬことになるのですが、200年後の今も生きるオドーが、まだ死ぬことなく生きているキラと再会し、初めてオドーの気持ちが未来のオドーからキラに明かされます。
オドーとキラの恋は、第6シーズン、「心をつなぐホログラム」 でようやく決着が付くことになります。
そして、第7シーズンの最終話、「終わりなき始まり」 。これはぜひその目で確かめていただきたいです。でもそれまでに、DS9 のエピソードを全て見ることをおすすめしますが・・
他にも、キラ以外の女性との恋のものがたりや、ラテックスによるマスクをせずに出演した 「夢、遥かなる地にて」、コミカルなオドーが見れる「がんばれナイナーズ」、オドーとキラの恩人、ヴィックを救うために、メンバー総出で楽しませてくれる 「アドリブ作戦でいこう」 など、オドーにまつわる話は枚挙に暇がないほどです。
また、監督:レネ・オーバージョノー としても DS9 では何度かメガホンをとっています。
最後に
DS9 のキャストとして、レネと7年にわたって共演して、その後20年間、スター・トレックコンベンションなどで共演しつつ、公私にわたり付き合いのあった ナナ・ビジター (Nana Visitor: キラ・ネリス役) は、その死に当たって文章を寄せています。
René Auberjonois Remembered by ‘Star Trek: Deep Space Nine’ Castmate Nana Visitor https://t.co/y5YWfcSXz7 @varietyさんから
— 雑廉堂 (@rough_and_cheap) December 30, 2019
彼女は、共演する以前より「もしチャンスがあればディナーの時に隣に座ってみたい俳優」のリストに、必ず彼が入っていたというくらい彼に尊敬の念を持っていました。彼との共演中、またその後の20年の間に、幸せなことに何度も彼とディナーをともにしたと書いています。
死の数週間前に彼と会ったとき、私達はこれが会う最後の機会かもしれないと知り、彼は私にプレゼントをくれました。
彼は言いました。
「ナナ、君は魂で役を演じている役者の中の一人だよ。」
それはまさに、私が彼について大好きだったことです。スター・トレックで彼の顔がラテックスのマスクに完全に隠されていたとしても、視聴者は彼の魂を感じることができたでしょう?
(中略)
レネにはたくさんの友達がいました。そして今彼を失ったことをとても悲しんでいることを私は知っています。・・・私達は彼の人としてのずば抜けた才能と、彼の経験についての物語を話せる機会を失うでしょう・・
オドー の存在感は、DS9 では唯一無二のものでした。
この存在感は、レネ・オーバージョノーの魂で演じている姿があるからなのだと改めて実感します。
RIP René Auberjonois — Odo ..
たくさんの感動と涙をありがとう。
安らかに眠って下さい。
0件のコメント